消閑の挑戦者 パーフェクト・キング

 これは今まで読んできた小説とは毛色の違う作品だと思う、角川学園小説大賞<優秀賞>受賞作らしいが、学園モノでは無いと思う、舞台は一つの街を繰り広げられる、何が繰り広げられるのかと言えば一つのゲームだ、その名を「ルール・オブ・ザ・ルール」天才果須田裕杜が一つの街を使って作りあげた壮大なゲームである、このゲームがこの小説の肝であると言っても過言ではないはず、というか無ければ成り立たない。


 ではどんなゲームか、まず二人一組での参加が条件である、どちらかが続行不能になったり「ギブアップ」と宣言した時点でその組は脱落する。最初に一つずつプログラムが与えられる、これがゼロになるとゲームオーバー、そしてプログラムを手に入れる方法は防御人(ディフェンダー)を倒すしかない、彼は世界から集められた優秀な殺人集団である。
 防御人にはそれぞれナンバーが付いているが、その中でも最強で最悪の存在である〝ゼロ〟が幾度と主人公達の行く手をさえぎることになる、〝ゼロ〟の正体とは誰なのかもこの小説の鍵。
 プログラムは様々な効果を持っている、指定した人を何秒か止まらせたり、ゴールの方向にしか進ませないようにしたり、相手のプログラムを破戒したり、これを使ってゲームを有利に進めることができる。


 このゲームのクリア条件は最初に果須田裕杜が告げる、2時間生き残るだったり、指定の場所まで行くことだったりと、大まかな条件を一つ出す、そしてここからが特殊だが、ランダムに選ばれた3人のプレイヤーがルールを追加できる、当然クリア条件に反するものは無理だが、それ以内のことならばどんなものでも良い、プレイヤーは片方ずつしか動いてはいけないだったり、最低一人は防御人を倒さなければならないだったり、指定の場所を通らなければならないだったりする、これにより条件を厳しくしたり、自分に有利にしたり、またそれを覆したりすることができる。


ゲームの説明だけでこんなに長い文章になると思ってなかったのでビックリ、次はストーリーへ


 鈴藤小槙、彼女は果須田裕杜とは幼馴染だった、高校生でクラスでは浮いた存在である、彼女自身も余り気にしていないが、そんな彼女にちょっかいを出してくるクラスメイト春野祥、彼らがゲーム会場の喫茶店で出会い、祥が忘れたカバンの中にあった携帯端末に触れてしまい、パートナーになってしまうところから始まる。
 いかにもボーイミーツガールな感じだが、これ以降ゲームが始まってから終るまで彼らが出会うことが無いというのが普通じゃないところだ、最後のシーンで初めて「そういえば会ってなかったな」と気づいたくらいの自然さで、他にも個性豊かな天才達が登場して、協力したり敵対したりとストーリーを盛り上げる。
 そして彼らには特殊な能力があり、それを「超飛躍(ウルトラジャンプ)」と言い、その能力を使っている時は目が赤くなり、普通の人間には出来ないようなことが出来るようになる、この能力もこの小説の鍵。
 果たして小槙は裕杜にたどり着くことが出来るのか、裕杜の目的とは、〝ゼロ〟とは何者なのか、祥が何故天才に挑むのかなど、様々な謎を織り込みつつ、進んでいくストーリー、面白くないはずないじゃないw


 面白いと思った部分、まず格闘でしょ、流れるような戦闘シーンはお見事、それにプログラムを使用することによって、ますます盛り上がります。プログラムの使用合戦も良い。それにこんなゲームに巻き込まれたにもかかわらずおっとりしている小槙というキャラがいい、そして王である果須田裕杜のところへ歩いていく最中に次々と出される問にノータイムで答えを出していく小槙、鳥肌が立ちそうなくらい格好良いね。
 裕杜がゲームを作った目的を知って思ったんだが、もし小槙が偶然このゲームに参加することにならなかったらどうするつもりだったんだ? って思ったw
 そして調べて分かったことなんだが、これ続編が出てるのね、読んだ感じこの小説は綺麗に終ってるのよ、続くような感じが全然しないわけ、一体どういう風に続けるつもりなんだろうか? いろんな天才に挑んでいく話、それとも挑まれる話だろうか? それを調べる意味でも続きが読みたくなったね。